【弁護士が教える、争わない交渉術#9】(一部追記)相手のタイプ別交渉術~スネ夫タイプ編~
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▼前回に引き続いてタイプ別交渉術、今日は”スネ夫タイプ編”です。
▼スネ夫タイプのキーワードは、「優越感」です。
▼漫画でスネ夫は、
「ハワイに行った」
「有名人と会った」
「こんな珍しいor高価な物を持っている」
「うちはお金持ちだ」
と自慢をします。
スネ夫は、自分自身の人間性(be)ではなく、何を持っているか(have)で認められようとします。
それは、親からは「あなたは勉強するから良い子」と育てられ、友達からは「○○を持っているから凄い」と言われ続けたので、「自分は、○○だから良い/凄い」というセルフイメージができてしまった影響かもしれません。
▼それはさておき、スネ夫タイプが価値を置くのは、お金、権力、情報、実績、人脈、スキル、資格、レア、高級など、「分かりやすい優越感の象徴」です。
また、ナルシストな部分もあります。
他方、正義・人情・協調性などにはあまり価値を置いていません。
▼こう書くとスネ夫タイプにはあまり良い印象を受けませんが、スネ夫タイプが特徴的なのは、「実際結構スゴイ」というところ。
何も長所が無いのに虚勢を張ったり尊敬を強要するわけではありません。
話術にも長け、「どうすれば得になるか」ということを瞬時に察知する勘の鋭さを持ち、判断力や知性も優れています。
このように、スネ夫タイプは、「実際結構スゴイ」ので、いわゆる「デキる人」という評価も受けるのですが、「仕事はデキるんだけど・・・」と言われてしまうのです。
▼余談ですが、スネ夫タイプにとって優越感を得る・維持することはとても大事ですから、それがガソリンになって努力を続けられ、結果としてスキルや肩書が付いてくるという、ある種の好循環も生んでいます。
ただ、いつか「優越感を得るために努力する」という軸を捨て、「成長するために努力する」という軸を手に入れたら、持ち前の才能を活かした魅力的な人になりそうです。
<アプローチ>
▼スネ夫タイプの行動動機を見ると、
「それをやることで、優越感を感じられる/優越感が増す」ならば、やります。
「それをやっても、優越感を感じられない/優越感が損なわれる」ならば、やりません。
▼まず押さえるべきことは、スネ夫タイプは、「自分の誤りを認める」とか「自分とは違う案の方が良いと認める」ということは、まずありません。
なぜなら、それをやってしまうと、優越感が損なわれるからです。
劣勢になったら、誰かのせいや環境のせいにして、自分が悪いんじゃないと主張します。
▼分かりやすく言うと、スネ夫タイプにとっての関心事は、「正しいか・正しくないか」ではありません。
「自分が優越感を感じられるか・感じられないか」なのです。
ですから、スネ夫タイプに対して、どれだけ正しさを強調しても、暖簾に腕押し。
この特徴を分かっていないと、こちらは、「なぜこんなに正しいことを言っているのにわからないんだ!」と感情的になって苦しむだけです。
▼ですから、スネ夫タイプに対して取るべきアプローチは、「こちらが正しいことを強調する」、「誤りを認めさせる」「主張を変えさせる」ではありません。
①優越感を損ねずに、
②より優越感を感じられる別の選択肢を提示して
③それを自ら選んでもらう
というアプローチが効果的です。
▼より優越感を感じられる別の選択肢を提示する際の留意点。
・ただお金が欲しいわけではないので、「こっちの方が儲かりますよ」というアプローチは優越感を損なうのでNGです。
・スネ夫タイプが持っている強み(判断力、話術、肩書、スキル、情報など)を使って助けて下さい・アドバイスを下さいというアプローチはOKです。
スネ夫タイプはナルシストな部分があり、自分が持っている強みを使って優越感を感じたいからです。
▼例えば、スネ夫タイプの案に賛成できないときを例にしてみます。
まず、スネ夫タイプの案が正しいとも正しくないとも言わず、別の案を出します。これは、スネ夫タイプの案に対する対案という出し方ではなく、「こういうの考えてみました」という出し方です。
こちらの案は、不完全な部分を残します。
完璧だと、間接的にスネ夫タイプの案を否定することになります。
←①優越感を損ねないというパート
そのうえで、こちらの考えに対して、アドバイスや教えを請うような形にします。
←②より優越感を感じられる別の選択肢を提示するというパート
そして、スネ夫タイプにアドバイスをしてもらう、教えてもらうという形でその選択肢を選んでもらいます←③それを自ら選んでもらうというパート
▼スネ夫が自分の主張を曲げようとしないのは、
「自分の主張を通す=優越感を感じられる」
換言すれば、「自分の主張を曲げる=優越感が損なわれる」
という前提があるからです。
ということは、極論すると、主張が通らなくても、それ以上の優越感を感じられれば納得を引き出せるわけです。
その端的な例が、「教えて下さい」「アドバイスを下さい」です。
教えて下さい、アドバイスを下さいとアプローチすれば、実際スネ夫は良いアイディアや情報を持っているので、助けてくれます。
そうやって進めていけば、スネ夫タイプは、当初の自分の主張を曲げることなく、こちらの主張に応じてくれるわけです。
▼もしスネ夫タイプが、どうしても当初の主張にこだわった場合。
その場合は、「そのアイディアはとても魅力的なのですが、期待に応える自信がありません。なので、別の案をベースにアドバイスを頂ければ、なんとかやれそうです」という風に、「そのアイディアに不満があるのではなく、別の原因でそのアイディアには応じられない」と伝えます。
そうすれば、スネ夫タイプの優越感を損なうことはありません。
▼大事なポイントをまとめます。
・キーワードは「優越感」。
・「自分の誤りを認める」とか「自分の案とは違う案の方が良いと認める」ということは、まず無い。
・スネ夫にとっての関心事は、「正しいか・正しくないか」ではなく、「自分が優越感を感じられるか・感じられないか」。
・OKアプローチ
→優越感を損ねずに、より優越感を感じられる別の選択肢を提示して、それを自ら選んでもらう
・NGアプローチ
→スネ夫タイプの主張を否定し、こちらが正しいと主張すること
▼なんでそこまでこちらが折れなきゃいけないの?と疑問に思われた方は、こちらの記事をご一読いただけると嬉しいです!
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