【弁護士が教える、争わない交渉術#15】”落としどころ(落とし所)”を意識する。
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▼交渉に関して、”落としどころ(落とし所)”という言葉を使うことがあります。
▼改めて「落としどころとは何か?」と考えると意外と難しいのですが、
①お互いの主張を100%通すのは難しいという前提で、
②お互いが歩み寄って、
③最終的に交渉をまとめるべき地点
といえます。
▼誰もが本音では、自分の主張を100%通したいもの。
ケースによっては、お互いの利益がぶつからないので、双方の主張が100%通ることはあり得ます。
ただ、多くのケースでは、一方の主張を100%通そうと思えば、他方は全面的に譲らなければなりません。
▼損害賠償の交渉で言えば、Aさんは500万円払って欲しいと思っているけど、相手のBさんはそもそも払いたくない。仮に払うとしても500万なんてとんでもない(数十万程度)というケースだとします。
Aさんの主張を100%通そうと思えば、Bさんは全面的に譲らなければなりません。
この場合に、交渉を通じて、どういう内容であれば合意できそうかを探っていくわけです。
これが、「落としどころを見つける」という作業です。
それでも合意が出来なければ、交渉決裂(場合によっては裁判)ということにになります。
▼交渉術の本なんかでは、最初は強気の提案をしておいて、そこから譲歩することで交渉をまとめるというテクニックがでてきます。
これは、「最初に言いたいことを全部言ってしまいましょう」ということではありません。
交渉は、理屈や損得だけではなく、感情が絡んでくることが多々あります。
それにもかかわらず、最初に言いたいことを言って相手の感情を害して頑固にさせてしまうと、まとまるものもまとまらなくなります。
人間は、損得だけでは動きません。
▼ですから、とりあえず言いたいことを言っておいて、それから落としどころを探すというのは、危険です。
落としどころは、最初から「見つけよう」という意識を持って下さい。
(1)落としどころは、闇雲に交渉している内に偶々見えてくるものではありません。
落としどころは、意識的に見つけようと思わなければ見つかりません。
(2)交渉当事者双方が見つけようと思わなければなりません。
片方が一生懸命落としどころを見つけようとしているのに、他方が好き放題主張していたら、なかなか交渉はまとまりません。
(3)双方が見つけようと思っていても、双方が考えている落としどころがある程度一致しない場合も、なかなか交渉はまとまりません。
つまり、片方は、100万円位が落としどころかなと思っていても、他方が300万円位が落としどころかなと思っていたら、その開きはそう簡単には埋められません。
その意味で、早期かつ適正に交渉を成立させるには、双方に落としどころを見極める力量が問われることになります。
▼以前は、「落としどころ」と言われても、雲をつかむような感覚でした。
だけど、交渉を繰り返していくと、「だいたいこの辺りが落としどころになるかな」という勘所が分かってきます(と言ってもまだまだ未熟であることは承知しています)。
▼ただ、「この辺りかな」というのは「仮説」に過ぎず、先入観を持ってはいけません。
この仮説は、「見立て」とも言えます。
実際に交渉が始まってからは、見立てに沿って進めることを意識しつつも、見立てにこだわらないというバランスが大事になります。
そして、状況に応じて随時見立てを修正していって、ケースに合った落としどころを探っていきます。
▼以上を念頭に、ぜひ今日から「落としどころ」を意識してみてください!
▼参考文献
弁護士が書いた交渉術関連の本では、谷原誠先生と荘司雅彦先生の本が分かりやすくて面白いと感じます。
ビジネス書なので、普段の生活や仕事で使うことが想定されています。
手にとってみてください。