【弁護士が教える、争わない交渉術#16】双方が望むものを考えれば、争いを回避できることがある。
▼これまでご紹介した基本事項と記事一覧はこちら。
弁護士が教える、争わない交渉術 カテゴリーの記事一覧 - 意識と努力で人生は好転する。
▼交渉とは、
①双方の望むものが違うけれど、
②自分の望むものを得たいという前提の下で、
③相手と取り決めるために話し合うことです。
▼交渉と聞いてイメージされるのは、「奪い合い」。
つまり、一方の利益が他方の損失となり、当事者の利益と損失の合計がゼロになる、ゼロサムゲーム。
▼ゼロサムゲームは、金銭で言うと分かりやすいです。
AさんがBさんに対して10万円を払った場合
Bさん→10万円の利益
Aさん→10万円の損失
プラス10万円とマイナス10万円で、合計はゼロです。
▼ゼロサム交渉では、
・いかに奪うか
・いかに奪われないか
が最大の関心事になりがちです。
▼なぜゼロサム交渉になるかというと、双方の望む「対象」が同じだからです。
対象が同じだけど、その対象の中で、望むものが違うんです。
そこに利害の対立が生まれます。
▼1枚の美味しそうなピザを2人が取り合う様子を想像して下さい。
2人が望む「対象」は、ピザという同じもの。
片方は、全部自分が食べて、相手に渡したくない。
他方は、全部自分が食べて、相手に渡したくない。
つまり、「ピザという対象の中で」望むものが違うんです。
▼ところが、そもそも双方の望む「対象」が違えば、利害の対立は起こりようがありません。
「そんなの当たり前でしょ」と思うかもしれませんが、実は、双方の望む「対象」を誤解したまま交渉を続け、散々争った末に痛み分けをするということがあるんです。
▼これを象徴する寓話があります(ハーバード流交渉術P103)
一個のオレンジを巡って姉妹が喧嘩した。
オレンジを半分に分けることでやっと折り合いがついたが、姉はその半分の中身だけを食べて皮を捨てた。
一方妹は残り半分の中身を捨て、ケーキをつくるのに皮だけ使った。
▼そう、姉は中身が欲しくて、妹は皮が欲しかったんです。
もし双方が望む対象を分かり合えていたら、
・姉→一個分の中身
・妹→一個分の皮
がもらえたはずです。つまり、双方が100%の納得を得られました。
▼ところが、双方が望む対象を分かり合えなかったばかりに(分かり合おうとしなかったばかりに)、双方の望む「対象」が同じだと勘違い。
「同じ対象の中でどう折り合うか」という交渉をしてしまいました。
その結果、
妹→半分の中身
妹→半分の皮
しかもらえなかったわけです。
▼まとめ
この寓話のように、双方が望む「対象」が同じだと思い込んでいることは少なくありません。
ところが実際には、そもそも双方の望む「対象」自体違うということがあります。
こういった悲劇を回避するには、「双方の望む対象は何か?」を見出そうとする意識が必要です。
その、「対象」を見極める作業も、交渉の一つです。
実際の交渉では、「対象」が全く違うとまでは言わなくても、自分が重視する対象と、相手が重視する対象が違うということはよくあります。
<Point>
✔双方が望む「対象」が何かを見出す。
✔双方が重視する「対象」が何かを見出す。